珍しく放課後以外ですれ違った葛城の頬には、傷痕があった。


「傷?ああ、確かにこないだも絆創膏貼ってた。」
オレは、葛城とよく一緒に居る椎名に聞いてみた。その性格故に誰からも好かれるタイプの葛城が、不自然な(喧嘩の後みたいな)傷を付けて校内を歩き回るだろうか?
「流石に俺も分からないわ、すまん。」
「何かありそうだから、気をつけてやってくれ。」
そう言うと、椎名は微笑んで頷いた。
「あんたに言われるとは思われへんかった。」
「なっ……」

……軽く貶してませんか?

「友也のことは任しとき。」
「ああ。」
椎名なら安心だろう、そう思っていたのに。


「葛城、お前最近可笑しくないか?」
「可笑しくなんかないですよ、新垣さんこそどないしはりました?」
たまたま擦れ違った葛城を引き止め、問い質(ただ)す。けれど相手は目を見ず。
「その傷は?」
「猫に引っかかれただけです。何でも無いですから。」
頑なに隠す様子で葛城は誤魔化した。違和感あるのに、オレは何も聞き出せなかった。
「急いでいるんで失礼します。」
そうして彼は去っていった。