イジメ、孤立、大嫌いな友達の事…言いたい事は山程あるのに、いざとなると思うように言葉が出てこない。
 気付けば、生徒全員による私のカウンセリング状態で、ポツリポツリと涙ながらに自身を語ったのは覚えているが、具体的に何を話したかは覚えていない。
 記憶として残っているのは授業終了後からの事で、帰り際、突然「友達になろう」と見知らぬ生徒に呼び止められた。彼女は同じ講座の1年生で、私の話を聞き、声をかけなくちゃと思ったのだと言う。その直後、今度は別の女の子2人組に「ちょっと、お話しませんか?」と誘われ、この2人と男子学生1人・講師とで、場所を移動し、話し合いが続行される事になった。
 改めて自己紹介し、女生徒2人はいつも私の後ろに座っていた他校の2年生、男子生徒は相談経験豊富な社会福祉コースの3年生で、女生徒のうち1人が、初回に行われた自己紹介での私の様子に自身と同じものを感じ、手紙を書いたが渡せないでいた事を知った。彼女もまた、イジメ経験者だという。
 私は再び緊張し、いつの間にか自分の世界に入り込んでいた。緊張で頭の中が真っ白になると、そのとき言えなかった言葉を、あとで回想しながら頭の中で語る癖がある。この時もさっきの教室での事を思い出しながら、頭の中で喋り続けていた。
 「この考えについて、どう思う?」
 講師に会話を促され、我に返る。頭の中だけオシャベリでは意味がないのに、いざとなると言葉が出てこない。皆、私のために集まってくれたのに、私は一体、何をしているのだろう…
 「今度から、教室で一緒に話しませんか?」
 女生徒の言葉を最後に、私達は上りと下りチームに分かれた。反対側のホームには、女生徒2人と講師が当然のように一緒に電車を待っている。私は1人、ホームから窓の景色を眺めながら、その当然の行為が出来ない故、同じく下りの男子学生とどう接したら良いか、考えていた。
 遅れてやって来た彼は何のためらいもなく私の横に並ぶと、そのまま一緒に電車に乗り込んだ。車体が揺れ、彼の手が私の体に触れると、紳士的な態度に好きでもないのにドキドキして、2人分あいた座席に戸惑っていれば、彼は「座ろう」と言って私を誘い、こんな体が密着するほど近くにいるのに、嫌な顔ひとつ見せない。