【風都】



自分の部屋なのに、物足りない。



ちーがいた痕跡を探し、ベッドにカラダを沈めた。



俺の部屋に戻っただけ。



机の上に積まれた服の山と、テーブルの上の灰皿。



俺が買った雑誌、俺の枕、俺の布団…。



ひとりで寝るなんて、風邪ひいた時以来。



「髪の毛…」



俺の長さじゃない、黒い髪が1本、指に絡まった。



いなくなるなら残して行くんじゃねぇよ。



険悪なままちーは冬休み前に引っ越した。



胃の上の方がチクチク痛い。



ただ前の生活に戻っただけなのに、頭の中は物足りなさでいっぱいだ。



俺はどうしたらいい?



埋められないほど深いブラックホールが胸に開いたみたいに。



なにをしてもダメだ…。



「クソが」



髪の毛をゴミ箱に捨て、治まらない苛立ちにどうしようもなくなる。



そばにいねぇじゃねぇか。



ウソツキ。



また俺は裏切られんのかよ。



本気になったら必ずこうなる…。