父親と名乗るオジサンが帰ってから、名刺と住所を渡された。



あたしに選ばせると夏川家の両親は言ったけど…。



「ここっ…いちゃダメ?」

「ダメじゃないよ。ダメじゃない。千衣ちゃんのしたいようにしたらいいんだから」



ユズさんもそう言ってくれた。



正直、ここを出るなんて考えもしなかったこと。



風都と離れたくない。



風都のそばにいたい…。



夏川家を出たくないよ…。



「あたし達は離れたって家族だって、それだけは忘れないで…」

「ユズさんっ…」

「でもね、でも…笠原さんは千衣ちゃんのこと、ちゃんと考えてくれてると思う…」

「どんな…意味…?」

「あたしだって人の親だから…少しだけ気持ちはわかってしまうの…」

「じゃあ…行った方がいいの?」

「ヤダね、やっぱり千衣ちゃんがいなくなるのは…ヤダよ…」



一晩考えた。



あたしは夏川夫妻に金銭的にも迷惑をかけてる。



食費から学費まで、今は全部を負担してもらってる…。