なぜか隣に座ってくれて、ポケットから街角で配ってる広告入りのティッシュをもらった。



紳士だ…。



「何組?」

「4…」

「俺1組」

「ん…」

「名前は?」

「千衣…月島千衣(ツキシマ チイ)…」

「ちー?似合わねぇな、お前デカいし」



ズバズバと思ったことを言う彼は、あたしのことを慰めるつもりはないみたいで…。



だけどそれが逆に心地よく感じた。



詮索もされず、ただ隣にいる。



涙が止まった後、名前を聞いてみた。



「夏川 風都」



吐き出されたタバコの煙が空に消えて、その光景と一緒に頭に刻み込まれた名前。



漢字まで教えてもらった。



ナツカワ…フウト…。



正直キレイな名前だと思った。



夏の川、風の都…。



ピッタリな名前だね…。



あたしから見ればキラキラで羨ましい。



この人は『自分』を持って生きてるのかもしれない…。



「行くとこなくなったんだ…」

「災難だな」

「風都、泊めてくれない?」



自然に出た言葉だった。