朝、


目が覚めると隣の体温に包まれていることに気付く。



サラサラした綺麗な栗茶色の髪も、



細いけれど筋肉質でたくましい身体も、



普段はかっこいいのに可愛い寝顔も、



この温かな体温も。



上原 哲という彼の存在が、わたしの五感全てを刺激する。



大好きな彼の隣にいられることがわたしの最大の幸せ。


彼を起こさないようにゆっくりと起き上がる。


が、その逞しい腕の中に封じられた。


「唯、おはよう…」


「おはよう、上原くん」


「どこ行くの?」


「お風呂…。あと朝ごはん作らなきゃ。上原くん、だから離して?」


そういうと何故か更に腕の力を強めギュっと閉じ込めるようにわたしを抱きしめる。


「う、上原くん?」


「……名前」


名前?名前がどうしたんだろう?


戸惑いつつ上原くんを見ると彼は照れたように頬を仄かに紅く染め顔を背けた。


「俺のこと名前で呼んだら離す…。唯は俺の名前忘れちゃった?」


「っ!!」


確かにわたしは上原くんのこと苗字でしか呼んだことないから。


名前で呼ぶのは彼の特別な人の特権だけなような気がして呼べなかった。


「てっ、哲くん」


恥ずかしくて小声でそう呼ぶ。