「ねぇ。」
…俺?
「ねぇ、おにいさん」
どうやら、俺のようだ
「私捨てられたんだ。拾って?」
…はい?
捨てられた…?
「どういう意味だよ…」
「わかんない、覚えてないから」
そう言ってはへらりと笑ってみせる幼い女の子
…捨て子…
ふと頭の中にその文字が浮かんだ
いや、一度よく考えよう
「…家の場所、判らねーの?」
「うん、今日引っ越してきたんだ神奈川から」
淡々とした口調で話す幼女…いや、少女
今も尚、しとしとと雨は降り続く
「取り合えず、濡れてるからおいで」
俺は少女を呼び寄せる
小さな子猫みたいな少女を
すると少女はトコトコと華奢な体を動かしこちらに来た
その小さな少女の顔立ちは整っていて
不覚にも一瞬見惚れてしまったんだ