純貴と香奈を先に帰らせた。今は大学の出口付近で一人待機している。



(…一体何用だ?)



その疑問だけがぐるぐると頭の中を回っていた。



ふと、時計に目をやる。



最後の講義が終わる時間だ。そろそろ男が出てくる。



そう思っていたら男の姿が見えた。まだ一、二分しか立っていない。早く終わったのか、それとも一至を迎えにいくので早く出て来たのか…



「…お。先に終わってたのか。まぁとりあえず着いて来てくれ」



男がそう言うと、大学から出て行く。一至も黙ったまま男の後ろを着いていった。



沈黙。



男は何も話さない。よって一至も何も話す事が出来ない。