やっぱり小学校3年生にもなると、それなりに恋愛にも目が行くお年頃らしい。



この頃はあの子の好きな子は誰だ、とかあたしが好きな子はあの子だ、とか…とにかくそんなピンク色の話がクラス中に飛び交っていた。


もちろんあたしだってそういう事に興味がなかった訳じゃない。


ただ、男の人が…"男"っていう生き物が昔から苦手だった。


自分が誰かを好きになるなんて、有り得ないと思った。


だってあの男の人のごつごつとした大きい手。


あたしをじーっと見つめてくるいやらしい目。


それから、威圧感を漂わせる低い声。


からかってばかりの言葉を発する口。


全てが嫌いだった。










…でもね?


今なら分かるよ。


ごつごつしているのは頑張って働いた人の手。


目だけは今でも苦手だけど…。心地よい、包み込むような、男の人独特のテノール。


それに、困った時は優しい言葉を掛けてくれる口。


全部貴方に触れて分かった事なんだよ。


あたしは貴方を1人の男として見てた。


でも貴方は違ったんだよね。











あぁ、もうすぐ夏がやって来る。