「ありがとうございました」



私たちは診察室を出た。

会計を済ませ、私は兄貴から合鍵を貰い、1人、兄貴のマンションへ帰る事にした。

私の荷物は兄貴に適当に持って来て貰うように頼んだ。



「苺愛、仕事を辞めるつもりはないのか?」



タクシーを待ってると、いきなり予想外の質問をされた。

私は「辞めないよ。何で?」と答えた。



「お前、女だろ?そんな怪我してまで続けるのかよ」



「“女”は怪我しちゃいけないなんて、誰も決めてない。私は大丈夫だから仕事に行きなよ」



私は兄貴を無理矢理、仕事に向かわせた。

消防士という仕事に、賛成してくれてると、思ってたんだけどな…。