連れて来られたのは、佐々木さんのマンション。 「上がって」と背中を押されて、無理矢理、上がらされた。 私たちの住む1LDKの部屋より広く、ここは3LDKだろうか。 部屋を見渡して、佐々木の事が、また一つだけわかった。 「どうぞ」 差し出されたマグカップを受け取ると、香りの良いコーヒーだ。 緊張が少し、解れる。 「さっきはごめんね。ちょっと調子に乗った」 「彼女さん、居るんですよね? なのに、どうして…?」 箸立てに、夫婦箸を見付けたんだ。 食器棚にも、ペアの茶碗やマグカップもある。