俺は商談室の扉を閉めると、井上を見た。




「どうしたの?新藤くん…もしかして、あたしとしたくなった?」



井上は俺に近付くとネクタイに触れてきた。




……ウゼェ




「……あのさ…あんたに頼みがあるんだ」




「……頼み?何?」




井上は重たそうなツケマツゲを付けた瞳を俺に向ける。




――ダンッ!




俺は井上の顔の両側に手を付く。



井上は酷く驚いた顔をしている。



「……前にも言ったと思うんだけどさ…今後一切、俺に近寄らないでくれないか?」




「なっ……」




井上は言葉を失ったように口をつぐんだ。