俺は溜め息を吐きながら、席を立つ。




「どこ行くんだよ、翔」




「ちょっとトイレ」




俺は歩を受け流すと、トイレに向かった。




あのまま、あそこにいるのは少しキツい。




彼女を諦めるには、もう彼女を見ない方法しか残ってない。




俺…柄にもなく“一目惚れ”ってヤツをしちまったみたいだな…




更に重い溜め息を吐くと、俺は項垂れながらトイレに入る。




――ジャー…




俺は用を済ませ、トイレを出る。



すると――




「あの…大丈夫ですか?」




声のするほうを見ると…




課長の女が心配そうに俺を見ていた。




ドクンッと鳴る心臓。




「あ…いえ…大丈夫です」




俺は小さく頭を下げると、足早にその場を去ろうとした。




「待って下さい!」




いきなり彼女に呼び止められた。