そのままずっと中身の無い話を重ねて、
多分1時間くらいずっと座布団に座っていた。
「なんか近くのスーパーで食い物買ってくる? うち何も無くてさ」
 綺麗な黒髪を触りながらぎこちなく聞いてくる彼。
意外と肌は汚い。見た目で好きになった訳ではないのでいいのだけれど。
「ん、うん」
 曖昧な表情で答えた。
やばい。
今立ち上がったら一気にくる。
これは生理あるあるである。
「座っている時はそうでもないけれど立ち上がった瞬間に
一気にドバッとくる」
 言いたい。どうでもいいけれど周りに共感して欲しい。
でも目の前にいるのは彼だけなのである。

「先に行っててー」
 と、私の家でも無いのに言ってしまった。
彼は一瞬不思議そうな顔をして「うん」と言い
「じゃあガスの栓締めなあかんから下言っとくわ」と下に降りた。
私はゆっくり立ち上がり、例の嫌な感触を味わいながら
座布団を見た。
 大丈夫。
 胸をなでおろす。
そして二人でスーパーに向かった。
合計千円にも満たない程度の食材をいくらか買い、
「これ食べ終わったら帰ろうか」とざっくりと話をしてから
私はスーパーのトイレを借りた。
 
 今日一日の中でようやく安心できた。

 よし、とりあえずトイレから出たらすんごい笑顔で彼に会おう。
とりあえずの罪滅ぼし。