「それから、木登りしたことなくって…怖いと思ってたんだ。だぶん、かすみちゃんに出会ってなかったら一生木登りなんかしなかったと思う。」



「優ちゃん…」





「僕、かすみちゃんに出会ってからすごく変われたんだ。

かすみちゃんに逢えて、良かった。」




お野菜も食べれない男の子じゃなくなった。

木登りだって人並みにできるようになった。


ただ単に、みんなが普通に出来ていることが出来るようになっただけだとしても。




かすみちゃんに逢えてよかった。




僕は素直に、心からそう思ったんだ。







だからお礼に、というのもなんだかおかしな話だけれど、パパからデジカメを借りてきた。

これでその夕暮れを撮って、かすみちゃんに見せてあげるんだ。




「―――…あたしも登る」


「え?」



見ると、かすみちゃんが最初の枝に手を掛けて登ろうとしているところだった。



「危ないよかすみちゃん!!ほらっ僕、カメラ持ってるからっ!撮って来るからかすみちゃんはっ…」



言っているうちにもかすみちゃんは、僕よりもずいぶん手馴れた様子でひょいひょい登って来る。