「優ちゃん…は、登らないの…?」


かすみちゃんが僕のことを初めて名で呼んでくれたことに一瞬高揚したけど(『優ちゃん』でももう何でもいい)、すぐに萎えた。




「僕、木登りやったことなくて…」


「「は!?」」



予想外にも、クラスメイト全員からも驚嘆の声があがる。


「いや、あの、家の近くに登れるような木が無かったから…」



すると、みんな『あぁ、都会っ子か…』というような納得顔をして軽く溜め息を吐いた。


「オトコらしさをアピールするチャンスよ!!」と小声で女子からよく分からない声援を浴びた。



だけど、僕は首を横に振った。



「やめておくよ、今日は。」



「どうして?」



かすみちゃんの黒い瞳が僕を再び惹きつけた。




ドキリとして、やっぱり目が離せない。




「せ、制服…」


「え?」