いけない保健教師〜気になる不良転校生〜

高橋が出て行くのを見届けた“ゴリラ”は、フンッと鼻を鳴らすと春田を振り返った。

春田は、少しの恐怖とおぞましさで、肩をピクッとさせた。


「美沙子先生。奴に、いや、あの生徒に何かされましたか?」


「いいえ、何も…」


春田は肩に乗せられた“ゴリラ”の分厚い手を払いながらそう答えた。


「美沙子先生は…」


先週までは“春田先生”と呼んでいたのに、今週からなぜか“美沙子先生”と呼ぶようになった“ゴリラ”。

もちろん春田は、“ゴリラ”からそんな呼び方をされたくなかった。


「どうして急に化粧の仕方を変えたんですか?」


「そんなの、私の勝手ですわ」


「俺は、前の厚化粧でも構わんですよ?」


(いや、アンタのためじゃないから)