「え?」


「お願い…」


「あ、いや、でも…」


春田の潤んだ瞳に見つめられ、徹也の頭の中は、心臓の鼓動が早鐘のように鳴り響いていた。


「私とじゃ、イヤ?」


悲しそうな春田を見て、


「そんな事はありませんけど…」


と言った直後、徹也の口は甘くて軟らかいもので塞がれた。


ほんの1秒か2秒、春田から触れるだけのキスをし、唇を離すと春田は徹也の胸に顔を埋めた。
赤くなった顔を、徹也に見られないように。


そして「おやすみなさい」と言うと、春田は幸せな眠りに落ちて行った。


徹也は、春田の寝息を聞きながら、指で自分の唇に触れてみた。


(キスって、気持ちいいんだな…)


徹也には、今のがファーストキスだった。