「とにかく、もう帰れよ。この女、重いんだよなあ…」


(痛っ。もう…いちいちつねらないでよ!)


「おばさんが心配してるぞ。って言うか、よく出してくれたよな?」


「こっそり抜け出して来たの」


(箱入り娘なのかしら?)


「あんまり親に心配掛けんなよ? 人の事は言えないけどな」


「うん。じゃあ、帰るね。元気でね?」


「ああ。おまえもな?」


由美という少女は、「徹ちゃんをよろしくお願いします」と言って春田にお辞儀をし、帰って行った。


春田は、少女の後ろ姿を不思議そうに見詰めた。徹也が、晴れやかな顔で少女を見送っているとは知らずに。