いけない保健教師〜気になる不良転校生〜

その少女は、遠目でも可愛いと分かる程の美少女だった。
歳はおそらく徹也と同じくらいだろう。ショートの黒髪が印象的な、清楚でおとなしそうな少女だった。


(誰? 福山君の…、恋人?)


「降りようか?」


「いえ、このままで」


「いいの?」


「いいんです」


そう言って歩き掛けた徹也だったが…


「顔を隠してください。それと、決して喋らない事」


と春田に耳打ちした。


(私の事、あの子から隠したいのね…)


まるで自分が日影者にでもなった気がして、春田は惨めだなと思った。


「いいですか?」


「うん、分かったわ」


徹也が顔を隠せと言ったのは、春田の顔が涙でひどい事になっているからで、喋るなと言ったのは、これから一芝居するからなのだが、春田はそれを知る由もなかった。