徹也はベッドに横になったものの、こめかみのズキズキする痛みは一向に治まらず、目をつぶっても眠る事が出来なかった。


仰向けで、指で痛むこめかみを押さえ、過去の事や春田の事を考える内に時は過ぎ、授業の終わりを告げるチャイムが聞こえた。


諦めて教室に戻る事にし、起き上がろうとした時、コツコツというヒールの靴音が近付いて来る事に気付いた。


(ああ、そうか。あの先生、俺が頼んだ通り、チャイムが鳴ったから起こしに来るんだな)


徹也はちょっとした悪戯心から、タヌキ寝入りをする事にした。


遠慮がちにカーテンがシャーっと引かれる音がし、空気が香水の甘い香を運んで来た。