「じゃあ、またね?」


「うん、バイバイ」


店を出た二人は、駅のホームに来ていた。

春田とは反対方向に向かう電車に乗り込む彩香を、春田が見送っている。


「美沙子、本当に大丈夫なの?」


「大丈夫だよー」


春田はデカンタのワインを全部一人で飲み干していた。駅に向かう途中、春田の足取りはふらふらとおぼつかないものだった。


「あんたは飲み過ぎなんだから、大人しく真っ直ぐ帰りなさいよ?」


「はいはーい」


電車のドアが閉まり、走り出すと、彩香は心配な顔で春田を見、春田は、赤い顔で笑顔を作り、彩香に向かって手をひらひらさせた。


彩香を乗せた電車が走り去ると、春田は笑顔を止め、手を下ろすと「彩香、ごめん」と呟いた。