「そうだな……だったら俺は、趣味全開で生きてるかもな、ははは!!」

「あ……そう」

 そうか、そうだった。
 わたしが居るから、冬馬はオタクの趣味を隠してるんだっけ……

「わたし、迷惑?」

「は?」

 わたしがいなければ、冬馬は好き勝手にできるんだ。

「ま、たしかに口うるさくて、コッチの業界の素晴らしさも理解出来ないお前がいなけりゃ、俺はのんびり出来るな」

「……そう、そうだよね」

 やっぱり、そうなんだ……

「でも」

 冬馬はわたしの頭に手を載せた。
 そう、子供の頃みたいに……

「お前が居なけりゃ、つまんねーよ」

「そう、そっか」

 どうやら、わたしは邪魔者では無かったようで……
 安心した。

「さ、次の投球だぜ!」

「うん」

 春の休日。その日は冬馬と楽しくあそんだ。
 冬馬の言う、そっちの業界とは無縁の楽しい休日を冬馬と2人で。


 ……でも、わたしは気がつかなかった。
 この日が、わたしにとって、そっちの業界とかけ離れた、最後の一日になる事を。
 この日のわたしは、まだ知らなかった。