昨日、恵子が言っていた。
 オタクを止めさせるのに、一番の方法。
 正直、最後の最後まで、使うつもりなんてないけど……

「着いたぞ、中に入ろう」

「……うん」

 使った所で、たくさんの可愛い女子達から言い寄られている冬馬に、効くなんて思えないよ……
 冬馬と並んで映画館に入りながら、わたしは少し、悲しくなっていた。

「美羽はポップコーンはしお味が好きだったよな?」

「え、うん。よく……覚えてたね」

 冬馬と映画に来たのは中学以来、久々。

「そりゃ、幼なじみだからな」

 わたしの好きなもの覚えていてくれた冬馬を見ると、ちょっと元気になった。
 ……単純だね、わたし。
 そういえば……わたし、最近、冬馬の事しか考えて無いなぁ……
 冬馬は、いつもどんな事を考えているんだろう?
 やっぱり、オタク的な事?
 いつも一緒に居ても、幼なじみでも、心が解かんないよ。
 心が解かれば……オタクの問題も……
 わたしをどう見てるかも……解かるのに。