駅前通り。此処はわたし達が住む街で、最もお店やビルが立ち並ぶ場所だ。
 有名なブティックや沢山のファーストフードに至るまで、何でもある。
 だから、学校の同級生やオタクじゃない普通の人達ばかりの場所。

「どうしたんだよ、人の顔……じろじろ見て?」

「あ、ううん。なんでもない」

 横に並んで歩く冬馬は、爽やかな笑顔を浮かべわたしに言う。
 こういう場所に居る時、冬馬はオタクである事を隠す。
 たから、カッコいいんだよ……
 こうやって、普通に歩いているだけでも、周りの女の子達は冬馬の事を見る。
 横に居るわたしは、ちょっと優越感だけど……

「なんだよ? また、じろじろ見て来て……言いたい事があるなら言えよ?」

「なんでもない。本当になんでもないの。……ごめん」

 正直、隣にいる勉強も出来て顔も良い冬馬と、釣り合う自身……
 わたしには無いよ。
 オタクの冬馬は嫌だけど、でもあのちょっと間抜けで隙がある時のほうが、わたしには気楽に思えた。
 ……なんか、複雑だよね。