「いやー、この店、一回来てみたかったんだけど、さすがに1人じゃ入りづらくてさ~」

 ああ、そうですか……
 それで、わたしの計画台無しですか。

「だったら、誰かオタクな友達と来ればいいじゃん!!」

 少し腹が立っていて、わたしはキツイ口調で冬馬に言った。

「……居ないんだよ」

 でも、わたしの言葉で冬馬は少し、寂しそうな顔をした。

「俺さ、この趣味の事、学校では隠してるだろ。だから、そういう友達……居ないんだ」

 なんで、そんなに寂しそうな声で言うの?

「だったら、カミングアウトすればいいじゃないの?」

 そうだよ。なにも隠す事ないじゃん。
 ちょっとくらい、印象が悪くなったって、やりたいようにやればいいのに。

「……それが出来れば苦労しないんだよ、はは」

「なんで? 冬馬って、そんなに優等生のイメージが大事なの?」

 昔から一緒に居る幼なじみの冬馬。
 冬馬は何でも出来る基本天才だったけど、自分の印象を良くみせようとする人間じゃなかった。
 それが何時からか……
 この趣味が出来た事だけは、人には隠すようになっていた。