表情には出さないものの、冬樹は内心焦っていた。
どうして自分がこんな行動を取ってしまったのかが分からない。
海が遥を想い、怪我をしているのを隠して頑張っている姿を見て
胸がチクリと痛んだ。
遥の影響で、どんどん彼女が変わっていく様子を見ていて嫉妬した。
想いが心の中で膨れ上がり、気づいたら彼女に迫っていた。
「ふゆきくんっ、」
海はもう一度彼の名前を呼んだ。
「好きだよ、今すぐ返事ちょうだい。」
「あ、あした、明日までまって!」
「待てない。」
ぐ、と彼との距離が縮まる。
すぐ目の前に冬樹の顔がある。
「早く、キスしちゃうよ?」
からかっているような口調、それが海を不安にさせた。
もしかしたら冬樹は自分をからかっているだけかもしれない。
「っ、からかわないで!」
右手で、ドン!と彼を押した。
突然の衝撃に冬樹は海から離れて、驚いたような表情を見せる。
「海ちゃん?」
「冬樹君は、本気かどうかわからないよ。」
声が震えていた。
「・・・本気だよ。」
「っ、」
ドキドキドキ、
心臓が壊れてしまいそうだった。
「海ちゃん。」
冬樹の顔を直視することができなかった。
「私っ、」
自分の気持ちがわからない。
もどかしさに表情を歪ませた。


