「いいの、佐々木さんもいないし、遥を怪我させたのは私の責任でもあるんだから。」
海の覚悟を決めた目を見て、何も言えなくなる。
彼はふう、とため息をついて困ったように笑った。
「無理しちゃダメだよ。」
「・・・うん、ありがとう冬樹君。」
ふわりと微笑み、彼をまっすぐと見た。
「海ちゃん、変わったね。」
「そうかな?」
雑談を交えながら、作業を再開していく。
海は右手だけでドリンクを作っているためにスピードは遅い。
できるだけサポートしようと冬樹は決めた。
「見た目もそうだけど、中身も変わったよ。」
「・・・もし、そう感じてもらえたならそれは遥のおかげかも。」
「だろうね、正直、遥が羨ましいよ。」
カタン、
冬樹は容器を置いて手を止め、隣に立つ海を見た。
「え?」
「こんな時に言うのもなんだけど、俺が前に告白したの覚えてる?」
「っ・・・あ。」
「一緒にアイロンを買いにいったとき、次の日返事がほしいって言ったよね?」
「ご、ごめんなさいっ!」
すっかり忘れていたらしい彼女は頭を下げて謝った。
「忘れてた?」
「うっ・・・。」
言葉につまる彼女にため息をつくと、冬樹は笑った。
「俺も、君と親戚だったらもっと仲良くなれたかな?」
「え、あの・・・。」
冬樹は海に近づいてくる。
彼女はだんだんと下がっていき、トン、と後ろの壁にあたった。
「ふ、冬樹君!」
しかし彼は止まらない。
体が密着する。
ドクン、ドクン、
顔が真っ赤に染まり、心臓が煩いくらいに高鳴る。
「可愛い、海。」


