モテる弟をもつ双子の姉の地味子の物語




しばらくして、救急車の音が響いた。

八木が呼んだのだろう。

「遥!無事か!」

救急車から降りてきた彼は急いで倒れている遥に駆け寄った。

そのあとに続いてマネージャーの理子も来た。

彼女は目を見開く。

「ど、どうして・・・。」

罪悪感を感じたのか、理子は言葉を失った。

救急隊員が担架を使い遥を運んでいく。

「筧は?なんともないんだな?」

八木にそう問われ、大丈夫ですと言おうとした時だった。

ピキ、

「っ!」

左手に激痛が走った。

「先生、あたし、遥君に付き添ってもいいですか?」

理子が八木に告げる。

「・・・しかし、お前はマネージャーだろう。」

「部員が怪我をしたのに、ほうってはおけません!お願いします!」

「・・・わかった。」

「筧さん、あとはお願い。わからないことがあるなら八木先生や永田部長に

聞けばわかると思うから。」

よろしくね、と言い理子は救急車に乗り込んだ。

「あ、筧、怪我は?」

もう一度問いかけた八木に、海は正直に怪我をしていると言えなかった。

自分まで病院へ行ってしまうとマネージャーが冬樹しかいなくなる。

遥の怪我と比べたら自分は大したことないと思い 平気です と作り笑いを見せた。



「なら後は永田に任せる。

練習メニューは副部長に渡してあるからな。あとは頼んだぞ。」

「はい。」

八木も救急車に乗り込み、病院へと向かった。

残された3人は合宿所へと戻ることになった。