「・・・で、ひとつ聞いていい?」
「うん。」
理子は声の大きさとトーンを少し落とし、つぶやくように言った。
「あなた、遥君のなんなの?」
まさか付き合ってるわけじゃないんでしょ、という。
海は ありえないよ! と慌てて言う。
「ただのと、遠い親戚だし、特別仲良いってわけじゃないし・・・。」
遥が聞いたら怒りそうなセリフだ。
「そうだよね、うん、よかった。」
理子は安心したような表情を見せる。
「あたし、本気で遥君が好きなの。応援してくれない?」
「も、もちろんっ!」
海は咄嗟にそう答えた。
海に負けをとらない美人の彼女。
この時は素直に応援しようと思った。
「よかった、あ、アドレス交換しない?」
遥君の事とかいろいろ聞きたいし、と理子は言う。
女子にこんなことを言われたのは初めてで海は大きく目を見開いた。
「うん!」
「筧さん声デカいよ~。」
理子はクスクスと笑う。
誰もが見ても海と仲良くなっている光景だが、
理子の内心は真逆だった。
それから数時間後、
地元から少し離れた合宿場に到着した。
まわりは自然に囲まれており、大きな剣道場がそびえたっている。
隣にはこれまた大きな宿舎がある。
部員達はバスをおりて騒ぎ出した。
「荷物は全部、三守と先生が運んでおく!部長の指示をよく聞いて
今からしっかり練習するように!」
「えー、今からかよ!」
「だりぃー。」
来て早々練習するとは思っていなかった部員達が口々に文句を言い出した。
八木はそれを一喝し、 ランニング10キロしてこい! と言った。


