ガラ、

しばらく3人で話していると海が教室に入ってきた。

いつもどおり女子の暴言が飛び交う。

海は対して気にしていない様子で自分の席につく。


「おはよう、筧さん。」

冬樹は何のためらいもなしに海にあいさつをする。

これにはクラス全員が驚いた。

海ははっとなり顔をあげて目を大きく見開いている。


「おはよう、筧さん。」

もう一度冬樹が挨拶すれば海は小声で お、おはよう と言った。



「冬樹君、なんでこんな奴にあいさつしてんの?」

「そーそー、冬樹君は優しすぎなんだよ。」



「クラスメイトだし、あいさつくらいしてもいいだろ?」

「お前発言までイケメンだなあ!」

健二は俺には真似できねーわ!と大声をあげた。

クラスメイト(主に女子)が、きゃあきゃあ騒ぎ出し、

やっぱり冬樹君はすごい!だの、王子様!だの、口々に褒める。

それを聞いて冬樹は恥ずかしそうに頬を染めた。


「・・・。」

一方、遥も冬樹を見て衝撃を受けた。

自分にはこんな勇気はない。

いじめを受けている海に、自ら進んであいさつなんてしたくないし、

関わりたくもない。

「冬樹、俺、尊敬するよ」

「え?何言ってるの遥まで」

「いや、マジで。」

遥はちらりと海に視線を向けた後、冬樹に笑顔を見せた。

冬樹になら、海と双子だってことが知られてもいいかもしれない。

そう思った。