モテる弟をもつ双子の姉の地味子の物語



そしてあっというまに時間は過ぎていき、

帰宅時間になったころ。

教室を出ようとした遥を呼び止めたのは顧問の八木だった。


「遥!」

「あ、先生。」

「筧海の事だが、交渉成立したぞ。」

「マジで?」

「おう。まあ、停学中だから学校は欠席になるけどな。」

「へえ・・・でも、海も参加できるんだ・・・。」


遥は嬉しさをこらえきれない。

自然と笑顔になりそうになるのを必死でおさえ、ありがとうと八木に告げた。

「あ、ああ。」

八木はぼっと顔を赤くする。

バクバクと脈打つ心臓。

八木は焦る。

(な、なんだこの感情はっ・・・。)

可笑しい。

「じゃあ、俺が海に伝えとく!」

また明日、と遥は手を振って生徒玄関にむかった。

その様子をぽかんと見つめている八木。

(・・・彼女がなかなかできないからって、まさか俺、

生徒に恋したんじゃないだろうな・・・しかも、男に。)

八木はふとそんなことを考えて、あわてて首を左右に振った。

ありえない。ありえてはいけない。

一瞬の気の迷いだと自己完結し、残りの仕事を終わらせるために

職員室へと向かった。








「海!」

家に帰ると、遥は真っ先に彼女の姿を探した。

「遥、おかえり。」

優しく微笑む彼女を見て自然と笑顔になる。

「明日、合宿来てよ。」

「え?・・・合宿って?」

「剣道部の、合宿。」

遥は臨時マネージャーについて説明しだした。