そしてあっというまに時間は過ぎていき、
帰宅時間になったころ。
教室を出ようとした遥を呼び止めたのは顧問の八木だった。
「遥!」
「あ、先生。」
「筧海の事だが、交渉成立したぞ。」
「マジで?」
「おう。まあ、停学中だから学校は欠席になるけどな。」
「へえ・・・でも、海も参加できるんだ・・・。」
遥は嬉しさをこらえきれない。
自然と笑顔になりそうになるのを必死でおさえ、ありがとうと八木に告げた。
「あ、ああ。」
八木はぼっと顔を赤くする。
バクバクと脈打つ心臓。
八木は焦る。
(な、なんだこの感情はっ・・・。)
可笑しい。
「じゃあ、俺が海に伝えとく!」
また明日、と遥は手を振って生徒玄関にむかった。
その様子をぽかんと見つめている八木。
(・・・彼女がなかなかできないからって、まさか俺、
生徒に恋したんじゃないだろうな・・・しかも、男に。)
八木はふとそんなことを考えて、あわてて首を左右に振った。
ありえない。ありえてはいけない。
一瞬の気の迷いだと自己完結し、残りの仕事を終わらせるために
職員室へと向かった。
*
「海!」
家に帰ると、遥は真っ先に彼女の姿を探した。
「遥、おかえり。」
優しく微笑む彼女を見て自然と笑顔になる。
「明日、合宿来てよ。」
「え?・・・合宿って?」
「剣道部の、合宿。」
遥は臨時マネージャーについて説明しだした。


