モテる弟をもつ双子の姉の地味子の物語



遥の心は少しだけ楽になっていた。

この気持ちは誰にでも言えるものではないが、

保険医の話を聞いて諦めなくてもいい事を知り、少しだけ安心した。



「・・・。」

教室前まで来て、そういえば自分は腹痛で保健室に行ったことになっていた

んだ、と思い出した。

このまま教室に戻り、手当てされた頬を見られれば教師は何かあったことに

気づくだろう。

まだ一時間目が始まったばかり。

教室に入れないからといって保健室に戻ることもできない。


(サボろ。)

遥は屋上へと向かった。

授業をさぼるのは久しぶりで、屋上の扉をあけると心地いい風が吹いた。


ここなら授業中は誰もこない。


遥はコンクリートの地面に寝転んだ。


しだいに、瞼が落ちてくる。

うとうととしてきて、遥はそのまま意識を手放した。



















「・・・くん、」

ゆさゆさと揺さぶられる。

誰かに名前を呼ばれていた。

「はるかくん、」

心地いい声。

この声を、遥は知っている。


「遥君!」

ぱち、

遥はハッと目を覚まし勢いよく起き上がる。