遥の心は少しだけ楽になっていた。
この気持ちは誰にでも言えるものではないが、
保険医の話を聞いて諦めなくてもいい事を知り、少しだけ安心した。
「・・・。」
教室前まで来て、そういえば自分は腹痛で保健室に行ったことになっていた
んだ、と思い出した。
このまま教室に戻り、手当てされた頬を見られれば教師は何かあったことに
気づくだろう。
まだ一時間目が始まったばかり。
教室に入れないからといって保健室に戻ることもできない。
(サボろ。)
遥は屋上へと向かった。
授業をさぼるのは久しぶりで、屋上の扉をあけると心地いい風が吹いた。
ここなら授業中は誰もこない。
遥はコンクリートの地面に寝転んだ。
しだいに、瞼が落ちてくる。
うとうととしてきて、遥はそのまま意識を手放した。
*
「・・・くん、」
ゆさゆさと揺さぶられる。
誰かに名前を呼ばれていた。
「はるかくん、」
心地いい声。
この声を、遥は知っている。
「遥君!」
ぱち、
遥はハッと目を覚まし勢いよく起き上がる。


