保険医は一瞬だけ動揺を見せたが、
すぐに平常を保つ。
思ったより大きな悩みを抱えている彼に驚く。
「軽蔑なんてしないわよ。
誰かを好きになるのに理由だって要らないし、制限なんてないでしょう?
先生は、素敵なことだと思うけどなあ。」
保険医は微笑んで遥を見た。
彼は大きく目を見開く。
「もし筧君が家族の人を好きになってしまっているのなら、
その想いは抑え込む必要はないと思う。
だからと言って、誰にでも言えることではないと思うけど
あきらめる必要もないと思うな・・・って、何言ってんだろ、あたし。」
意味わかんなくなってきちゃった、と保険医は笑った。
「よし、手当て終わり。」
いつのまにか頬の手当ては終わっていた。
「どうする?このまま一時間休んでく?」
「・・・いえ、戻ります。」
「そう?相談だったらいつでも乗るからね。」
先生でよければ、と保険医はいう。
そんな彼女に遥は笑う。
「じゃあ、また来ようかな。」
ありがと先生。と言って保健室を出た。
「・・・筧君でも、女の子に悩むことってあるのね。」
あんなに恰好良いのに、と保険医は思った。


