「・・・。」
頬の痛みなんかより、心の痛みの方が強かった。
海の想いに気づかなければよかった。
後悔しすぎた。
双子の姉が好きだなんて絶対に誰にも相談できないし、
一人で解決もできない。
「あら?どうしたの?」
保険医が遥に気づき、声をかけてきた。
遥は顔をあげる。
「大丈夫?今にも泣きそうな顔してるわよ。」
「えっ、」
自分でも気づかなかった。
思わず自分の顔に触れる。
「頬も腫れてるじゃない。ちょっとこっちにいらっしゃい。」
保険医は慣れた手つきで手当てをし始めた。
遥は大人しくしていると、保険医は優しそうな表情で口を開く。
「何かあったの?よかったら相談にのるわよ。」
「いえ、別に。」
「そう?先生ね、こう見えて口が堅いのよ?」
「・・・。」
雰囲気が優しくて、暖かくて、遥は知らぬ間に心を許していたのかも
しれない。
いろいろ考えすぎて疲れていたのか、遥は言葉を発した。
「どうしたらいいのか、分からないんです。」
「うん。」
「好きな子がいて、でも、その子と付き合うことは絶対に
できないし・・・。」
「どうして?筧君、モテそうだし大丈夫だと思うけど。」
「家族の人が好きだって言ったら、やっぱり、軽蔑しますか?」
「え?」


