「で?借りないの?」
「借りて、いいの?」
「は?」
何言ってるの?という視線を向けられて、海は顔を赤く染めた。
「普通借りるでしょ。ま、借りたくないならいいけど」
「・・・借り、ます」
「じゃ、図書カードだして」
男子生徒は図書カードが入っているボックスを指さした。
海は慌てて自分のカードを探す。
それを男子生徒に渡し、借りる手続きをしてもらった。
「筧海さんだっけ?よく、図書室に来てるよね」
「・・・え、は、はい。」
「俺、三守 冬樹(みかみ ふゆき)。」
「は、はい。」
「同じクラスだし、よろしくね」
海は目を見開いて冬樹を見た。
自分に よろしくね と言ってくれた生徒は高校に入ってから初めてだった。
「よ、よろしく・・・。」
「じゃあ、もう外結構暗いし気を付けて帰ってね」
ばいばい、と笑顔で手を振られ海は戸惑いながらも手を振りかえした。