あっという間に高校二年の初日が終わった。

遥は初めてクラスが同じになった生徒たちとも簡単に打ち解けてしまっていたが、

海はいつものように一人だった。

下校時間をずらすために遥が友達と教室をでていくのを確認してから

スクールバックを肩にかけて教室を出る。


時計を見れば午後5時30分。

初日のために今日は部活はない。

といっても、海は帰宅部だ。



(・・・そうだ、図書室に寄って帰ろうかな。)


海は頻繁に図書室に寄っていた。

しかし、一度も本を借りたことはない。

図書委員の生徒にからかわれて以来、借りれなくなっていたのだ。



図書室があいているのは6時まで。

あと30分ある。


図書室は図書委員の男子生徒一人しかおらず、あたりはシンとしていた。

海はなれた足取りで、自分が気に入っている作家の小説がある場所へと向かうと

こないだ出たばかりの新しい本を手に取った。



机に座り、一人黙々と本を読み始めた。














「ちょっと、」


「え、?」

急に声をかけられ、顔をあげれば困ったような表情をした図書委員の男子生徒がいた。

「もう、閉館するんだけど」

そういわれて時計を見れば時計の針は六時をさしている。


「ご、ごめんなさっ・・・」

海はあわてて本を閉じ、元の本棚へと返そうとした。

「あれ?借りないの?」

「え・・・?」

初めて 借りないの? と聞かれた。

海は改めて男子生徒の顔を見る。

少し茶色がかった髪と整った顔に魅入る。

海は素直に恰好良いと思った。