とんとん拍子に進んでいく話に海はついていけなかった。
とりあえず、一万二千円という大金を彼に払わせてしまったことに
罪悪感を感じた。
「三守君、家までは一人で帰れるし・・・それに、お金は返すよ」
「冬樹でいいよ、海ちゃん。」
「ふ、冬樹君・・・」
「うん。お金はいいよ、そんなに高くなかったし。」
「え!?」
冬樹の家は金持ちなのだろうか。
普通の感覚とは違う気がする。
「で、家は?こっち方面であってるの?」
「あ、うん・・・。」
冬樹は意地でもついてくるつもりだ。
それを悟った海は遥とばったり鉢合わせになりませんように、
と祈りながら家まで送ってもらうことにした。
*
そのころ遥は、部活動に熱を注いでいた。
海がこんな状況になっているなんて知る由もない。
新しく入ったマネージャーは愛想がよく、
すぐに部員とも打ち解けている。
健二は彼女に本気で惚れたらしく、必要以上に話しかけていた。


