海は緊張していた。
隣に冬樹がいる。
それだけで心臓が高鳴り、顔に熱が集中する。
遥を想うのとはまた違う感情が海の胸の中にはあった。
(・・・なんだろ、この気持ち。)
「海ちゃん、どこでアイロン買うの?」
「えっ、き、決めてなくて・・・。」
「あの店は?」
冬樹が指さした先には、女の子らしい店があった。
中には化粧品から洋服まで売っているらしく、
なかにはドライヤーやアイロンもある。
冬樹は海が迷っているのを知ってかしらずか、
彼女の腕を引いて店に入った。
海は自分が場違いな気がして自然と顔が俯く。
「いらっしゃいませー。何かお探しですか?」
ヘアーアイロンのコーナーを見ていると女性店員が話しかけてきた。
冬樹は海のかわりに、受け答えをする。
「お試しでやってみますか?」
「お願いします。海ちゃん、やってもらえば?」
冬樹は海の背中を押し、進める。
海は戸惑いながらもうなづき、女性店員に案内され椅子にすわった。
「彼女さんですか?」
「クラスメイトです。」
だよね、と海に話しかける。
海は顔を真っ赤にしながらうなづいた。
店員は海の髪をまっすぐにしていく。
冬樹はそれをじっとみていた。


