それを我慢して、遥は健二に言う。
「お前こそ、絶対海を好きになるなよ?」
「なるわけねーだろ、あんな奴。」
「今後、アイツにどんな変化があっても、絶対好きになんなよ!?」
「ハイハイハイハイ。」
なるわけねーって、と馬鹿にしたように笑う健二に
少しイライラしながら 約束な と釘をさして置いた。
そして放課後、久しぶりの部活に少しだけ気分が高揚した。
「・・・海、お前忘れんなよ。」
「うん・・・。」
アイロンの事をそっけなく指摘すると、遥は健二を連れてさっさと剣道場へと
向かった。
海は少しだけ表情を暗くさせたが仕方ないと割り切る。
「海ちゃん。」
「!?」
ビクぅ、と肩が震えた。
後ろを振り向けば、笑顔を見せる冬樹がいる。
「今日俺、部活休みなんだ。よかったら一緒に帰らない?」
「今日は・・・用事があって・・・。」
「用事って?」
「アイロン、買いにいくの。」
だから、ごめんなさい。と海は頭をさげた。
(俺が誘ってやったのに断るなんて・・・このブス、)
冬樹は内心そう思っていたが、笑顔でそれを隠し
ついていってもいい?と言葉をつなげた。
それなら、と海も了承して冬樹と二人で学校を出る。
(冬樹君まで・・・なによ、なんであんなブスなのよ!?)
以前海の髪を切り、イジメの主犯である斉藤は海の様子を見て怒りに震えていた。
(もう、許さない。)
斉藤は一人、誰もいなくなった教室に行き、
海の机を見てニヤリと笑った。


