それからの授業は、遥の頭にまったく入らなかった。
海への想いを否定したいのに、
できない自分に腹がたつ。
昼休み、昨日の態度とは一変し
以前のように戻った健二と屋上で昼食をとっているときに、
彼は突然口を開いた。
「そういえば、剣道部にマネージャー入るらしいな。」
「え?マジで?誰入んの?」
「佐々木理子。知らね?」
「あー・・・。」
たしか同じ中学校だった。
二年の時にクラスが一緒だった覚えがある。
「同中だった。」
「まっじでー!?超羨ましい!隣のクラスの佐々木理子って言えば、
美人で有名じゃん!」
「へえ。」
「反応薄いなー・・・あー、お前はモテるから女に困ってないってか!?
うっぜー!」
「なんでそういう方に解釈すんだよ。」
「だってそういうことじゃん。・・・あれ、てかお前、
今まで彼女いたことあんの?」
全然そういう話聞かないけど。と健二が言った。
「・・・関係ないだろ。」
「え!?まさかお前っ・・・モテるのに彼女できたことねえの!?」
「悪いかよ。」
今まで好きな人なんてできたことなかった。
いや、いたけど、気づかなかっただけかもしれない。
「お前、人生損してんなー。」


