授業中、遥は無意識に海の背中を見ていた。
前よりも少しだけ背筋がよくなり、
黒板を見つめている。
(・・・海、変わったな。)
それは、遥にしか気づかない些細な変化かもしれない。
変わっていく彼女を見ることはうれしいはずなのに、
どこか寂しく、どこか苦しかった。
(さっきも、平気でうそついてたし。)
遠い親戚だと嘘をついた彼女。
きっと、自分に迷惑をかけないようにという配慮だろう。
(・・・海。)
自分と彼女は双子で、家族。
海はきっと、きづいていないだろうが冬樹に恋してる。
「・・・。」
(って、何考えてんだろ、俺)
高校二年生になってから、まだ少ししか経っていないが
最近海のことばかり考えている。
「次、筧。筧遥の方。P5ぺージから次の段落まで読め。」
「え、あ、はい。」
突然あてられ、遥は慌てて現代文の教科書を開くと
言われたページを読みだした。
「きっと、あなたは御嬢さんに恋しているんです。と彼が言った・・・・っ、」
ドクン、ドクン、
心臓がうるさい。
教科書の文字が頭に入ってこない。
続き、読まなきゃ、つづき、
(恋?御嬢さんに?いや、これは教科書の内容であって、
俺が海に恋してるわけじゃ・・・)
「筧遥、どうした?読めないのか?」
教師が心配して声をかけてきた。
遥は前を向く。
「っ・・・いや、大丈夫です。」


