久しぶりの学校。

校門の前で深く深呼吸した。

大丈夫だと何度も自分に言い聞かせ、海は足を踏み出した。




ガラ、

教室のドアを開けると、視線が一気に降り注ぐ。

ひそひそと聞こえる声を無視して自分の席に座った。

自然と俯いてしまう顔。



ガタン、

「?」

ふいに物音がして顔をあげれば、

前の席に座っている理子の姿があった。

視線は自分に注がれている。


「まったく、俯いてないでしっかり前を見てなさいよ。」

ほら、とぐぐっと海の頬を掴んで前を向かせる。

「り、理子ちゃんっ!?」

「・・・今まで、ゴメン。」

「え?」

「だから、ゴメンね!」

目を見開くと、理子の頬は少し赤く染まる。

「う、うん。私のほうこそ、ごめんなさい。」

「なんで海が謝るのよ。」

「私にも悪いところあったし・・・。」

「気にしすぎ。・・・遥君、転校したって聞いたんだけど。」

「・・・うん、おばあちゃん家の近くの高校に転校したの。」

「・・・そう。」

昨日の夜メールが来たことを思い出し、理子は表情をゆがめた。

「近々、健二たちと説教しに行かなきゃね。」

「え!?」

「海も強制参加なんだから。」

理子はまわりの目を気にすることなく、自然に海と会話をしていた。

その様子を見て、 なんで理子が!? とか ありえねー とかいう声が届く。

そんなことを言われても全く気にしていない理子を見て、海は驚いた。

「・・・言いたい奴には言わせておけばいいのよ。」

「・・・ありがとう。」

「別に。あ、お昼の事なんだけど4人で食べない?」

「4人?」

「あんたと健二と冬樹と、あたし。」

「・・・いいの?」

「いいから誘ってるんでしょ。」

遠慮しないでよ、と理子は笑う。

海は微笑み、心の中で遥に ありがとう と礼を言った。