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「遥ー、準備できた?」
「・・・うん。」
次の日、母親に呼ばれて遥は返事をした。
穏やかとは言えない微妙な空気が流れる中、海は心配そうに遥を見つめる。
短期間でいろんなことがありすぎたなあ、と思うと同時に
胸が切なくなった。
父親は朝から車をだしている。
「・・・海ちゃん、ごめんね。」
母親はそうつぶやき、海の頭を撫でた。
本当は、こんなことしたくない。
けれど、二人のためを思った結果、こうするしかない。
「ううん、いいよ。」
海は困ったように笑い、母親から離れて荷物を持つ遥に視線をうつした。
「遥。」
彼は振り向く。
「・・・海?」
それ以上何も言わず、海は笑顔を崩さない。
「遥、行くぞ。」
父親に呼ばれて、遥は名残惜しそうに海から視線を外した。
「・・・。」
ばたん、
助手席に乗り込み、ドアがしまる。
「さあ、海ちゃんも学校の用意しなさい。」
「う、うん・・・。」
「海!」
突然、叫ばれた。
窓を開けて、遥は身を乗り出す。
「絶対、待ってろよ!」
ぽかんとした表情で遥を見た。
みるみるうちに表情が緩んでいく。
「・・・うんっ!」
その返事を聞いた遥は満足そうな笑顔で頷き、
助手席に座りなおすと母親と海に向けて手を振った。


