コンコン、
海が荷物を整理しているとノックが鳴る。
「開いてるよー。」
がちゃり、
部屋に入ってきたのは遥だった。
「どうしたの?」
様子が可笑しい双子の弟に優しく問いかければ、遥は無理やり笑顔を作った。
「俺、転校することになった。」
「・・・え?」
「ばあちゃんの家で、しばらく生活することになった。」
「な、何言ってるの?」
突然の事に頭がついていかない。
海は目を見開いた。
「海とは、たまにしか会えないな。」
「ど、どういう意味?なんで、いきなり転校なんてっ・・・
お母さんに聞いてくる!」
母親のもとに向かおうとしたとき、遥に腕を掴まれて阻止される。
「・・・遥、」
「決まったことだし、転校の手続きも済ませたらしいから
もう遅いよ。」
「・・・。」
「何泣きそうな顔してんだよ。
永遠に会えなくなるわけでもないのに。」
「・・・でも、」
「大人になったら、海を迎えに行く。
それまで待ってろって言っただろ?」
「うん、」
だから少しくらい離れても大丈夫だよ、と遥は笑った。
海もつられて笑う。
「いつ転校するの?」
「明日ばあちゃんの家に行くから、正式に学校に通うことになるのは
明後日だと思う。」
そっか、と海は言った。
「行ってらっしゃい、遥。」
「おう。」
笑顔で送り届けよう。
会えなくなるわけじゃない。
大丈夫。
自分に言い聞かせて、海は微笑んだ。


