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家に入ると何故か両親に怒られることはなかった。
「遥はちょっとこっちに来なさい。」
両親に呼ばれ、遥だけリビングに残る。
不思議に思いながらも、海は自室へと向かった。
「・・・大事な話があるんだ。」
「何?」
父親の真剣な表情に遥は息を飲んだ。
「遥には、転校してもらおうと思う。」
「は?」
突然の話に驚けば、父親はすまなそうな顔をした。
「これも二人のためなのよ。」
「二人のためって・・・どういう意味だよ。」
「双子なのに、お互いが好きなんでしょう?」
ドクン、
否定はしなかった。
遥が俯けば、母親は黙る。
変わりに父親が口を開いた。
「お前たちが家出をしている間に、良く考えたんだよ。
このまま常に近くで生活していたら、二人とも駄目になってしまう。」
「・・・。」
「遥はおばあちゃんの家に行きなさいね。
話はしてあるから。」
「勝手に決めんなよ。」
「しょうがないじゃないの。お互いの事を忘れるためならこれしかないでしょう。」
「っ・・・。」
遥と海は自分達でケジメをつけたつもりだった。
これから大人になるまで、普通の家族として生活していくつもりだったのに。
追い打ちをかけるように、両親は二人を更に引き離そうとする。
「明日の朝、おばあちゃんの家に送ってあげるから。
荷物をまとめておきなさい。」
それだけ言うと両親は席を離れた。
「・・・なんでだよ、」
遥は呟いた。


