そのまま交番に連れていかれた二人は、
警官から家出した理由を聞かれたが答えることはなかった。
その状況に呆れた警官はため息をつき、
二人を心配している親御さんに早く帰してあげよう、と言ったのだった。
「じゃあ、ここにいるから早く荷物をまとめて来いよ。」
「・・・ハイ。」
警官に言われて、遥と海は返事をする。
パトカーで送り届けてもらうのは少々気が引けたが、しょうがない。
世話になった沢田に挨拶をしなければならないし、
借りていた部屋にある荷物も運ばなければならない。
冬樹と理子、健二には後に説明することをメールで伝えて帰ってもらった。
戻ったらちゃんとお礼を言わなきゃなあ、と海は思った。
家の玄関を開ければ、目の前に沢田が立っている。
「おー、お前ら。」
「「すいませんでした。」」
すかさず二人は頭を下げた。
「別にいいって、気にしてねえし。」
「でもっ、たくさん迷惑をかけて・・・、」
海がばっと顔をあげ、沢田を見ると彼は呆れたように笑って
海の頭を撫でた。
「また、遊びに来いよ。」
「っ、沢田さん・・・、」
「早くコレ持って行けって。」
「え、荷物・・・。」
荷物までまとめておいてくれたらしい。
海と遥は目を見開いた。
「「ありがとうございました。」」
何から何まで世話になっていた。
沢田はダルそうに、 おー。 と返事をすると
二人に荷物を押し付けて背中を押す。
「沢田さん、ほんとにありがとうございました。」
パトカーの前で、海はもう一度礼を言った。
泣きそうな表情の彼女を見て、遥も表情を歪める。
そのままパトカーに乗りこむと、動き出す。
海は後ろを向いて、小さく手を振ると沢田も小さく手を振りかえした。


