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「はぁー、はぁー。」
二人はなんとか丘の上までたどり着いた。
夜空には大きく花火が打ち上げられている。
後ろからの追ってはもういない。
それに安心し、お互い顔を見合わせた。
「なんか、すごいことになっちゃったね。」
「・・・そうだな。」
「・・・・・帰ろうか。」
ぽつりと、海がつぶやいた。
「この花火が終わったら、家に、かえろ。」
もう十分だと海は悲しそうに笑った。
遥との思い出ができて楽しかった。
皆にも迷惑をかけたし、これ以上は逃げられない。
「・・・うん。」
遥は小さく呟いた。
近くにあるベンチに座り、寄り添う。
海が甘えるように遥の肩に頭を乗せる。
ぎゅ、
繋がっている手に力がこもった。
「遥、ありがとう。」
「え?」
「私が変われたのは、全部遥のおかげだよ。」
「・・・海が頑張ったからだろ。」
「違うよ!
私、遥と双子でよかったと思ってる。
双子じゃなかったら、きっと遥は私を見てくれないと思うし。」
ドドン、と花火が大きく鳴った。
刹那、遥は海を抱き寄せた。
「海、」
彼女は静かに遥の背中に手をまわす。
トクン、トクン。
お互いの心臓の音が聞こえる。
海は少しだけ頬を赤く染めた。
「海。」
ぎゅう、と力がこもった。
もうすぐ花火は終わる。
「遥、す・・・。」
好きだよ、そう言いたかった。
けれど、最後まで声になることはなかった。
遥の唇で、遮られる。
海は目を見開いた。
そしてゆっくりと離れ、遥は人差し指を海の唇にあてた。


