突然の健二の登場に戸惑いを見せた警官に隙ができる。
一瞬だけ力が緩まった。
遥はばっと離れて、海の腕を強引に引いた。
警官の手は海から離れる。
「遥、筧さん!行けよ!」
「健二っ、」
「ちゃんと、帰ったら説明してもらうからな!」
「ありがとう!」
行こう、と小さな声で海に告げた。
そして再び、二人は走り出す。
「あーあ、かっこつけちゃって。」
理子は呆れたような声で言った。
「どうするつもりなのよ。」
「どうって・・・。」
そこまで考えてなかったらしい。
目の前には警官二人が、自分を睨んでいる。
捕まってしまったらどうしよう、という考えが浮かび冷や汗をかいた。
「おー。お前ら来てたのか。」
「は?」
知らない男性の声に、3人は振り向く。
「お前は・・・、」
冬樹の目が見開いた。
この声は、昨日海に電話をかけたときに変わりに出た声と似ている。
「俺の子供に何か用があるんですか?」
「・・・は?」
警官はぽかんとして沢田を見た。
「さっきの二人、俺の子供。」
似てるだろ?と顔を前に出してくる。
反射的に警官は身を引いた。
「・・・勘違いだったのか?」
「いや、でも資料と似ている・・・。」
「資料?」
ばっと沢田は警官が持つ資料を取った。
「こいつら、さっき向こうの方で見ましたよ。」
「何!?」「本当か!?」
沢田は堂々と嘘をつき、遥と海が逃げた方とは反対方向を指さした。
警官は舌打ちをして、沢田に言われた通りのほうへ走っていく。
「す、すげえ。」
健二は思わずつぶやいた。


