「遥っ!」
やっと声を出す事ができた。
出来るだけ大きな声で遥の名前を呼んだ。
遥の目に海の姿がうつる。
人混みをかき分けて進み、海の元までなんとかたどり着く。
「ったく、何してんだよ。」
「ごめっ、」
「ほら、」
遥が海に手を伸ばしたが、それは彼女に届くことはなかった。
ぐいっ、
「っ!」
肩を掴まれ、ばっと振り返る。
「やっと捕まえたぞ。」
警官が息を切らして二人を見た。
気づけば自分の周りには4人の警官。
腕を掴まれる。
「交番まで来てもらおうか。親御さんも心配しているよ。」
「離せよ!」
「わがままを言うんじゃない!」
ぐい、
警官は乱暴に遥の腕を引いた。
(もう駄目だ、このままじゃ家まで強制的に帰らされる。)
海は泣きそうになる。
もう少しだけでよかった。
今日だけ、遥と二人で過ごしたかった。
「遥!」
なんとか遥に触れようと海は必至で手を伸ばすが、
警官に阻止され、あと少しというところで届かない。
「離せって!」
遥はもがくが、大人の力に敵うはずが無かった。
「別々の交番に連れていこう。
それぞれから事情を聴きたいからな。」
「遥!筧さんっ!」
刹那、聞き覚えのある声が聞こえた。
二人は目を見開く。
「健二!?」
「正直、なんの相談もなしに家出したお前にムカついてるけど
今回は特別だからな!」
「なんなんだ君たちは!」
「オッサン、二人を離してやってくれないかな。」
健二は嘘っぽい笑顔を浮かべて遥を掴んでいる警官に言う。
そんな友人を見て、冬樹はため息をついた。


